カフェで果歩と話す事二時間。

「じゃあね、また明日~」
「バイバイ、果歩」

駅からの停留場からバスに乗って行った果歩を見送って、私は駅のホームに向かって歩き始めた。

其の時

(え)

不意に前方にあったお店のガラス窓に見慣れた人影が映っているのを見つけた。

少し足を止めて徐に振り返ると

「!」
「・・・刑部、くん」

私の少し後ろにあったお店の看板に身を潜めていた刑部くんがおずおずと姿を現した。

「・・・あ、ははっ・・・見つかっちゃった」
「こんな処で何しているの?」
「えっと・・・ぐ、偶然・・・遠峰さんを見かけて・・・其れで・・・驚かせようかと」
「ねぇ、正直に云って」
「!」

私は刑部くんの顔を見上げて其の瞳をジッと見つめた。

「・・・」
「~~~っ、ごめんなさいっ!俺・・・遠峰さんの後をずっとつけていました」
「どうしてそんな」
「だって・・・心配で」
「何が」
「俺の誘いを断って誰と何処に行くんだろうって・・・気になって」
「・・・」
「もしかしたら俺の事からかっていて・・・本当は他に彼氏がいて・・・二股かけていたんじゃないかって」
「・・・」
「色々考えたら収まりつかなくなって」
「刑部くん、ストーカーだったの?」
「っ!」
「先刻まで一緒にいた友だちから訊いたの。刑部くん、ずっと私のストーカーだったんだって」
「~~そ、其れ・・・は」
「絶対ヤバいから付き合うのは止めろって云われた」
「! そんなっ!違うよっ」
「何が」
「あ・・・えっと・・・其の、確かにずっと・・・遠峰さんの事、見ていたけど・・・ストーカーって事じゃなくて・・・君の事、心配で・・・」
「心配?」
「・・・遠峰さんが今まで付き合って来た奴らって、陰で遠峰さんの事・・・酷い云い方で貶めていて・・・」
「酷い云い方って?」
「・・・・・・云いたくない」
「教えて」
「・・・・・・」
「教えてくれないならもう絶交する」
「?! ぜ、絶交って・・・そんなっ」
「なんて云っていたの」
「~~~」
「刑部くん」
「~~~っ、ダッチ・・・ワイフ」
「何其れ」
「・・・ただ・・・ヤるだけの女だって」
「・・・」
「ヤる目的で告白しても断らないからって・・・噂になっていて・・・其れで俺はそんな酷い扱いをされている遠峰さんの事が心配で・・・」
「・・・」
「いつか危険な目に遭うんじゃないかって心配で・・・其れで」
「守ってくれていたの?」
「そ、そんなカッコいいものじゃないけど」
「・・・」


やっぱり男子には女子には見えない世界というものがあるのだなと思った。

好きだと告白して来た人はみんなそういう事だけが目的で───


(そんな事薄々解っていたじゃない)


解っていた。

みんながみんな私の体目当てだったという事くらい。


(解っていた・・・のに)

「! 遠峰さんっ」
「・・・ふっぅ」

気が付けば私はポロポロ涙を流していた。

「なか、泣かないで、遠峰さん」
「っ、泣いてなんて・・・」

震える声で気丈に言葉を吐いた私の体が暖かいもので覆われた。

「!」
「俺、絶対遠峰さんを幸せにする!」
「・・・刑、部くん」
「もう絶対・・・遠峰さんにこんな涙を流させない」
「~~~」

抱きしめられている───そう思った瞬間、私の心は且つてない程の温もりで満たされた。


(刑部くん・・・あなたってやっぱり)


「だ、だから・・・あの、仮にストーカー判定されても・・・付き合うのを取り消したりしないでください!」
「・・・」

こんなロマンチックな雰囲気の中で云う言葉は其れか、と思ったら妙に笑えて来てしまった。

(本当・・・変な、人)


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