結局其の日のお昼休みの時間中、ほぼ刑部くんは泣きながらお弁当を食べていた。

(本当、変な人だな)

既に私の中では刑部くんは変な人というイメージで固定された。

でも変な人ではあったけれど、何故か今まで付き合った事のないタイプの人だったから余計に興味は惹いた。


お昼休みが終わって教室に向かう途中刑部くんから「今日も一緒に帰れる?」と誘われたけれど

(多分問い詰められるだろうな)

そんな予感があったので、其方を優先するべく刑部くんからの誘いを断った。

其の瞬間、刑部くんは哀し気な顔したけれど

「明日からはずっと一緒に帰るから」

という私のひと言でまたパッと顔を赤らめ嬉しそうにしていた。

(コロコロ表情が変わるのね)

そんな処も物珍しく、私は興味を惹いたのだった。 







「よしよし、約束忘れていなかったわね」
「約束・・・はしていなかったけれど、果歩、刑部くんとの事訊きたそうだったもんね」

放課後、昨日刑部くんとお茶をしたカフェに今日は果歩と来ていた。

「このわたしに報告もなしに付き合うなんていつからそんな悪い子ちゃんになっちゃったのかなぁ、明乃は」
「いつも報告していなかったじゃない」

果歩は中学生の時からの友人で、広く浅く付き合っている交友関係の中では一番深く付き合っている貴重な友人だった。

勿論私の数々の恋愛遍歴も一番近くで見て来た人物である。

「そうだけどさ、今回ばかりは相談して欲しかったなー」
「どうして?」
「だって相手が刑部だったなんてヤバいよ、明乃」
「どうして刑部くんだったらヤバいの?」
「だってあいつ超有名じゃん」
「有名?」
「明乃のストーカーで」
「・・・」

(刑部くんが・・・ストーカー?)

突然の告白に驚く───というよりもピンと来なかった。

「あいつ、ずっと明乃の事、つけ回していたんだよ」
「・・・」
「陰からコソコソ盗み見ている様な感じでさ、わたしが明乃と喋っていると大抵視界の端にあいつがいるのよ」
「そうなの?全然気が付かなかった」
「そりゃそうだよ。あいつ、絶対明乃の視界に入らないようにしていたもん。其の代わり周りにはバレバレだったけど」
「・・・」

(そう・・・だったんだ)

果歩から刑部くんがストーカーだったという話を訊いても特に驚かない私自身に少しだけ驚いた。

(まぁ、昨日今日の刑部くんの様子をみてたら納得するかな)

ストーカー紛いの事をされていたと云われても、実際私は気が付かなかったし、怖い目も気持ち悪い事にも遭っていなかった。

ストーカー被害とは其の存在に全く気がつかなければ被害にも何もならないのだと思った。


「だからさ、刑部だけはやめておきなって!あいつ、絶対変態だよ」
「・・・まぁ、変な人だなとは思ったけれど」
「でしょう?!───はっ、まさか明乃・・・もうあいつに酷い事されたんじゃ」
「・・・」

(其れが全くなかったから変な人だと思ったのだけれど)


今まで付き合って来た男は彼氏彼女という関係になった途端に私の体を求めた。

好きだから、愛しているからこういう事したいんだよ───と云われればそうなのかな、と思った。

今更勿体ぶるものでもないので求めには応えるのだけれど・・・

(何故か逢う度にセックスして其れで終わりなんだよね)

デートらしいデートをする事もなく、大抵ホテルに連れて行かれた。

だけど

『なんか明乃って人形みたい』

『おまえって見た目と違って淫乱だよな』

『なんかなんでも云う通りになるのっておかしいぜ』

『思っていたよりもつまんねぇ女だな』

『感情あるの?』

数々の悪態をつかれ、早々に別れを切り出されていた。

(好きだと云われたから付き合ったのに)

どうして私の方がフラれる形になるのかいつも謎だった。


「・・・」

そんな酷い恋愛しかしてこなかった私だけれど何故か刑部くんの事を知れば知る程、彼は他の人とは違うんじゃないのか───?

そんなあやふやな考えが蓄積して行くのだった。


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