『えぇーちかげくんとあけのちゃんてふたごなの?』
『ふたごってそっくりのきょうだいのことだよ』
『にてないね、ふたごなのに』 

子どもの頃、よくそうやって揶揄された。

私と千影は双子の兄弟だった。

だけど二卵性の双子に加え、男と女だったから余計に外見は似ていなかった。

だけど似ていない兄妹でも姿形のよかった両親の影響か、其々異性好きされる顔に育ってしまった。

私とは違う高校に通う千影も昔からよくモテていたし、常に女の子の影が見え隠れしていた。

面と向かって話したり訊いた事はなかったけれど、私同様性に関する経験は早かったのだろうと思う。

(其れにきっと数もこなして───)

「ねぇ、何作っているの」
「!」

考え事をしていてぼうっとしていた頭に千影の声が響いた。

「なんか先刻から香ばしい匂いがしているんだけど」
「あっ!」

オムライスを作ろうとチキンライスを炒めていたのを忘れていた。

少し焦げ目がついたご飯に「やっちゃった」と思わず声が漏れた。

「調理中に考え事しない事。ご飯が焦げるだけならいいけど、火を噴いて火事になったら怖いからね」
「・・・うん」

千影のこういう処は好きだった。

私が些細な失敗やミスをしても怒らないし馬鹿にしたりしない。

(・・・お父さんは正反対だったけれど)

不意に厭な記憶が頭を過り、ブンブンと頭を振った。

(今は料理に集中!)

これ以上香ばしくなっては困るので、私は気持ちを入れ替えて調理を進めたのだった。



「う~ん、いいよ、明乃。この焦げが絶妙な苦みのアクセントになっている」
「素直に美味しくないって云ってよ」
「美味しいよ」
「・・・」

にっこり微笑まれて居た堪れなくなった。

其処までのキラキラ笑顔を向けられる様なオムライスじゃない。

でも千影は決して嘘をついている訳じゃないというのが其の表情から解る。

「千影は私に甘いね」
「ん?どうしたの、急に」
「ううん、なんでもない」
「・・・」

ふたりきりの食卓にスプーンがお皿に当たる音だけが響いている。

「そういえば中村さん、なんで休みなの」
「あぁ、なんでも風邪ひいたらしいよ。インフルだって」
「えっ、大丈夫なの?高齢者のインフルエンザって怖いんじゃ」
「一応予防接種打っていたらしいよ。だからそんなに酷くはないって。でも一週間は来られないからって謝っていた」
「・・・そっか」

話に出ている中村さんというのは、私たちが小学生の時から家に来てくれている家政婦さんだ。

母が亡くなってから仕事に忙しい父に代わり面倒を見てくれる60代後半の女性だった。

「代わりに誰か寄越そうかって云ってくれたけど、いいですって断った」
「なんで」
「だって僕たちもう高校生だよ?自分の事は自分で出来るし、料理や洗濯は明乃がやってくれるでしょう?」
「其れって私ばかりが損なんじゃない」
「あれ、中村さん以外の他人、家に来て欲しかった?」
「・・・」

其れを云われると首を縦に振る事は出来なかった。

長年慣れ親しんだ中村さん以外の他人をこの家に入れる事には大いに反対したかったから。

「はぁ・・・仕方がないな。でもせめて洗濯くらいは千影がやってよ」
「別にいいけど。でも明乃は其れでいいの?」
「何が」
「僕に下着を干されても」
「っ!」

(其れは・・・厭だっ!!)

「僕は構わないよ?女性の下着なんて見慣れているから全然平気だし」
「~~~わ、解ったわよ、洗濯と料理、やればいいんでしょう」
「なぁに、たかだか一週間の事だから。あっという間だよ」
「云うだけは簡単よね」
「其れに父さんも出張だとかでしばらく家を留守にするらしいから」
「・・・」
「ふたり分の洗濯と料理だよ。楽でしょう」
「・・・そうだね」

其れっきり私は口を閉ざし、黙々とオムライスを食べ終えた。

しばらく父がいないと訊いて、ホッと安堵の気持ちを感じながら───


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